警備員②アルバイト・パートの仕事収入体験談

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仕事人ファイル施設警備員 菊田さん(仮名)62歳

定年退職のリタイア組とドロップアウト組が混在する現場には、トラブルも多いそうだ。菊田さんに聞いた。

―現場の空気は?

菊田:定年退職者は穏やかな人が多いですね。黙々とサラリーマンを勤め上げた忍耐力があるからでしょう。

菊田:ドロップアウト組は、よく言えば個性的、自我が強くプライドの高い人が多いです。話す事と言えば、ほとんど昔の自慢話ばかり。すすき野で札束をばら撒いたとか、会社経営で大成功していたとか、演歌歌手の誰それとポン友だとか、近いうちに大事業をやるとかね。どこまで本当か分からないですが、その話にちょっとでもケチをつけようものなら、大喧嘩になる事もあります。社会からドロップアウトした敗北感とか、ひがみ根性みたいなものがあるからでしょう。その辺が退職者とは違いますね。

問題の多いドロップアウト組

菊田:ドロップアウト組は、問題行動も多いですね。シャワー室の監視中に新聞を読んでいたり、パソコンで株をやったり。夜中に女性控室でTVを見ていたものもいます。居眠り程度なら大目に見てくれますが、さすがにここまで来ると首です。でも半年もするとちゃっかり舞い戻ってきます。この業界は慢性的な人手不足ですし、やめた本人も他の仕事がないのです。

菊田:みんな結局さみしいのです。だから普段はいがみ合っていても、いざとなると親切です。弱者の助け合いみたいな意識が経営者側にも警備員側にもありますね。

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―仕事上のトラブルは?

菊田:窃盗が多い事です。以前、中国人グループが労働者として入り込んで、高価な携帯電話や商品券を組織的に盗んでいました。手口はこうです。品物を服の下に隠し、休憩やトイレに行くふりをして裏の塀から外に投げ出します。外で待っていた仲間がそれを回収するという訳。今でも紛失する品物は多く、完全には防げていません。そのため、出入時はIDカードの提示と手荷物の検査を行いますが、労働者は外国人が多く、なかなか徹底できません。

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外国人労働者に手こずる

菊田:外国人で多いのはベトナム、中国、東欧、中東、アフリカの順です。ベトナムはまじめで礼儀正しい子が多いですね。荷物の中を見ると、日本語の教科書が入って、昼は学校、夜は仕事と、遠い外国でけなげに頑張っている子がほとんどです。自分の息子より幼そうな子に、たどたどしい日本語でIDカードを忘れた言い訳を一生懸命されると、つい、良いよ、明日は忘れんなよ、とこっそり入れてしまいます。ベースから家まで取りに行く間に電車が終わっていますし、そうなると彼らに1日分の賃金が入らなくなります。こっちも人間ですから、つい規則を曲げてしまいます。そんな子は、次からは必ずIDカードを持ってきて、ニコリと笑ってくれます。

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菊田:その反面、混雑に乗じてチェックをすり抜けようとする者もいます。そんな時は、こちらも追わざるを得ません。一度、何度注意してもIDカードを持ってこない子を作業場まで追って行った事があります。というのは、IDカードを横流しして働く不法滞在者がいるからです。その時、作業主任から「警備員風情が身の程をわきまえろ!」と真っ赤になって怒鳴りつけられました。 現場も慢性的な人手不足で、一人でも欠けるのが嫌だったのでしょう。

仕事の矜持

菊田:そんなことがあっても、仕事なので、ここだけは譲れません。それがないと何のために突っ立っているのか、それこそ人形と同じじゃないですか。底辺の仕事でも最低限の誇りはあります。

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―良いところは?

菊田:適度な肉体労働で、健康が維持できることですね。おかげで足腰は丈夫です。朝の通勤ラッシュも無縁ですし、昼間は自由な時間があります。仕事も慣れると簡単で楽です。勤務は、単独なので誰にも指図されないし、自分のペースで過ごせます。人付き合いの苦手な自分には向いていますね。

―嫌なことは?

菊田:とにかく眠いことです。慣れてはいますが、時々落ちますね。あとは長時間の拘束です。14時間の勤務は長いですよ。家と職場が逆転してしまいます。生活のベースが職場で、昼間数時間外出して、戻ってくるという感じです。例えるなら刑務所の刑務官とか自衛官みたいなものでしょうか。家族のある人は9時5時の日勤を探すことをお勧めします。また人によっては、警備員を見下す人もいて、最初はみじめな気分になりました。今では全く気にしませんが。

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―どんな人が向いていますか?

菊田ー基本的に、その場所に存在していることが仕事です。それ以上期待もされないし相手にもされない。10年たっても発展性のないルーチンワークで、ただ黙々と年を取ってゆくのに耐えられる人が向いています。あとは誰かとの共同作業はなく、深夜の孤独な勤務ですから、孤独に耐えられる人、孤独が好きな人に向いています。その一方では、やはり保安の仕事ですから、何もなくても、毎日ある程度の緊張感を維持できる人が向いています。手を抜こうと思えば、きりがありませんし、結果的には自分がダメになります。まあ我々の年齢で、ぜいたくは言えません。仕事があるだけましと思っています。虫のように黙々と生きてゆこうと思っています。

―資格や能力は?

菊田:警備会社を管轄するのは警察庁ですから、前科持ち、薬物中毒はダメです。精神障害、重病患者も不可です。他に条件はありません。腕力や武道の経験も必要ありません。入職時に新任研修が30時間と、半年に1回の法定研修がありますが、その時給は出ます。資格を取得すれば、時給が50円くらい上がることもあります。誰でもできる仕事ですし、オリンピックに向けて求人は増えると思いますよ。

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取材後記―菊田さんは、穏やかに淡々と仕事の話をしてくれました。今まで意識したことのなかった警備員の世界が何となく見えてきました。虫のように黙々と生きるという菊田さんの言葉に、シニアのしたたかさや覚悟が見えました。

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次回は別の仕事人を取材します。

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