精神疾患が描かれている映画を見ることは、難しい本を読むより、はるかに理解しやすい時があります。今回は強迫性障害を持つ作家が主人公の「恋愛小説家」を見てみましょう。
「恋愛小説家」原題: As Good as It Gets)は、1997年製作のアメリカ映画。
ジャック・ニコルソンとヘレン・ハントが、共にアカデミー主演男優賞と主演女優賞を受賞したジェームズ・L・ブルックス監督の恋愛映画。
「強迫性障害」を持つベストセラー作家の恋愛小説家と、子持ちのウェイトレスとの恋愛を軸に、強迫性障害の実態がさりげないユーモアを交えて描かれています。
ジャック・ニコルソン演じる小説家メルヴィンは、世間の嫌われ者。
行きつけのレストランでは、勝手に自分のテーブルを決めて、先客を追い払う。
通りでは「触るな」とわめきながら、ブロックのヘリをよけながら歩く。
隣の犬を廊下にションベンをするからと、ダストシュートに放り込む。
家の鍵と電灯は5回ずつ確かめ、石けんは1回使うとゴミ箱に放り込む。
しかも誰かれ構わず毒舌を吐き、相手を怒らせる。
まわり中から「最低の人間」と言われてもお構いなし、反省するどころかますます悪態を吐くばかり。
本人も強迫性障害とわかっているが、クスリ嫌いで、自らを治そうともしない。
こんな彼の行動は、異常そのものだが、ジャック・ニコルソンが演じると思わず笑ってしまう。
しかし、これは決して笑い事ではないのです。
強迫性障害は、強迫観念から高まる不安を打ち消すためにおかしな行動に走っててしまう。
その行動が変なことも本人は自覚しているが、どうしても止められない。
具体的には、何か触る度に手洗いを何度もしたり、鍵やガス栓の確認を際限なく繰り返したりする。
ガス栓や、鍵が不安になって家に戻るなんてことは、普通の人でもあり得ますが、強迫性障害はそれを5回も10回も繰り返すところが異常なのです。
こうなると、日常生活にも支障が出てきます。
治療法としては、心療内科や精神科での受診や投薬により改善する場合が多くあります。
傍から見れば迷惑で滑稽だったりする強迫性障害ですが、本人はいたって真剣なのです。
ちなみに悪態をつくのは強迫性障害とは関係ありません。主人公メルヴィンの偏屈な個性なのでしょう。
映画では、そんな彼がキャロルとの恋を通して、次第に変わってゆくさまがじっくりと描かれています。
見終わった後に、少しハッピーになれる、愉しみつつ、精神疾患が理解できる名作です。
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