仕事人ファイル5 交通誘導員 戸塚さん(仮名) 58歳
電機メーカーを早期退職。交通誘導員歴3年。リアルな実体験を語ってもらいました。
―交通誘導はどんな仕事ですか?
戸塚:ニンジン(赤く光る誘導棒)を振って人や車を誘導する仕事さ。道路工事や花火大会、建設現場、駐車場とかでね。
戸塚:私は主にトラックターミナルをやっているよ。入口と出口でそれぞれ一人誘導員が担当して、トラックが道路へ出入りする時、通行人に危険が無いように誘導するんだ。
―給料や待遇は?
戸塚:勤務は、12時間交代だよ。朝9時からの日勤と夜9時からの夜勤に分かれる。
戸塚:日給は、日勤で12,000円。夜勤は、割増がついて13,500円になる。私はきついけど金になる夜勤中心だ。月に20日やれば27万円になるからね。誘導員の収入としては悪くないよ。
戸塚:装備は支給される。制服、ニンジン、ヘルメット、安全ベスト…LEDが付いていてピカピカ光るやつだよ、レインコート。冬は防寒着も支給される。靴だけは自前だよ。
―この仕事についたきっかけは?
戸塚:大手電機メーカーの系列会社の技術者だったんだけど、リストラの対象になってね。早期退職したのさ。
戸塚:それから、いろんな会社を受けたなあ。就職情報誌、人材会社、求人サイト、ハローワークあらゆる方法で。100社以上応募したよ。
戸塚:Uターン求人の地方企業も受けたよ。でも難しいね。面接でこんなことも言われたよ。「うちの会社は、あなたのような一流企業出身者を雇える会社ではない、あなたにはもったいない」と。
戸塚:キャリアもかえって邪魔になるよ。中小企業では、大企業出身の中高年は使いづらいんだろうね。
戸塚:技術者として働きたかったけど、結局諦めた。それで、中高年向けのアルバイ情報誌に求人が出ていた交通誘導員になったのさ。
―大変なことは?
戸塚:一日中外にいるからね。夏はとにかく暑いよ。日陰がないから一日中かんかん照りの中で仕事してる。水分を補給しないと熱中症になっちゃうよ。1日にペットボトル5本は飲まないと。
戸塚:冬は深夜がメチャクチャ寒いよ。夜中の3時頃が一番冷えるね。身体中にカイロを貼りまくっても、隙間から冷気がじわじわ入ってくる。暇な時はイスに座っていいんだけど、寒くて座っていらんない。いつも体を動かし続けてるよ。中には釣り用のヒーター付きベストを着ている人もいるよ。
戸塚:ひたすら寒さに耐えながら、空がだんだん明るくなってきて、太陽が上がった瞬間、ああ助かったって思うよ。でも戦争でシベリアに行った人に比べればまし。そう思って我慢しているよ。
戸塚:雨もつらいね。全身ぐっしょり濡れるし。でも一番辛いのは風だ。ここは埋め立て地だから、一日中海風が吹くんだよ。風に一日中に当たってると本当に疲れるよ。
戸塚:そんなこんなで体には負担がかかるから、私なんか帯状疱疹になっちゃったこともあるよ。この仕事をやっていると、足腰は強くなるけれど体はじわじわ弱っていくんだ、見た目が老け込むのも早い。日焼けして、しなびていたら誘導員だと思っていいよ。
―危険なことはありませんか?
戸塚:トラックを誘導している時に、ライトも点けないで突っ込んでくる自転車がいるんだ。歩道がちょっと下り坂になっているから、スピードも上がっているしね。慌てて止めるんだけど、間をすり抜けて行く。本当に危ないよ。
戸塚:私らの交通誘導は、警察と違って強制力がないからね。あくまでお願いなんだよ。相手か嫌だって言ったら、何もできないわけさ。
戸塚:だから、道路工事は怖いよ。止まってくれない人がいるし、ギリギリで掠めて行く人もいる。車で突っ込まれて死んだ誘導員もいる。どんなドライバーが来るか分かんないし、必ず止まるって限らないから、いつも用心はしているよ。
戸塚:中でもベンツはヤバい!いや、乗っている人がやばいんじゃなくて、車そのものがヤバいんだよ。
交通誘導員が恐れるベンツの怖さとは? 次回、危険な現場の実態をお聞きします。
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