仕事人ファイル2 清掃員 白井さん(仮名)63歳
60歳で工務店を定年退職。掃除夫歴2年。リアルな実体験を語ってもらいました。
―この仕事を始めたきっかけは?
白井:定年後に体を壊して、しばらく何もしてなかったんだ。でも生活が苦しくてね。会社は潰れそうで退職金も出なかったし。少しでも稼ぎたくて仕事探したんだよ。
そのとき医者から1日2時間以上は働くなって言われて、そんなのあるかよと思ったんだけど、たまたまハローワークの求人にこの仕事があったんだ。
―どんな仕事ですか?
白井:俺のは、オフィスビルの清掃。やる事はゴミの収集、床の掃除機かけ、カウンターや入り口ドアの窓磨きなんかだよ。
ー詳しく教えてください
白井:朝5時45分に出勤するんだ。冬なんか真っ暗だよ。6時から道具そろえ。ゴミ袋が20枚。ゴミの回収カート3台。台車が2台。掃除機。洗剤。雑巾。軍手。汗ふきタオルなんか。
白井:6時10分にオフィスのカギを開けて入り、まず40個あるゴミ箱を分別回収。90Lの袋が20枚、パンパンになるよ。次に、ゴミ箱に入んない物の回収。古くなったカメラや、壊れた機械とか。
白井:そのあとは、新聞置き場だ。これが一番大変なんだよ。俺の担当しているのは新聞社だから、毎日大量の新聞が出んだ。背丈くらい積まれた新聞の山が3つか4つある。他に雑誌も大量に出る。
それを台車に積むんだ。1束40センチくらいに縛ってあるけど、何十個も台車に積むと腰が痛くなるよ。紙ってのは、1枚だと重さがないけど、束になると重いんだよ。これが札束だったらなっていつも思うね。
白井:その台車をエレベータで運んで、下に降ろすんだけど、一度ロープが切れたことがあった。もう何千枚という新聞やチラシが散乱して、エレベータが閉まらなくなっちまった。
早朝だから、利用する人はいないけど、警報音がビービーなり続けて、警備員は飛んでくるし参ったよ。
―給料や待遇は?
白井:作業員は全員パート扱いで昼間は時給1,000円。だけど俺は早朝の短時間だから1,200円もらっている。仕事は6時から8時30分までの2時間30分で、1日2,800円。月20日働いて56,000円だ。
白井:俺は、持病があるからこれしか出来ないけど、フルタイムでやっている人でも日給8,000円で月に17万円だね。生活出来ないから大概、他の仕事を掛け持ちしているよ。
それでも、うちの会社は銀行グループの末端企業だから、1年以上勤めれば有休が3日取れる。通勤費は実費支給、制服も支給。他に手当はなし。
―仕事上のトラブルは?
白井:よく、書類や封書なんかが、ゴミ箱のうえにが乗ってたり、立て掛けてあったりするんだ。そんな時、ゴミかどうか判断に迷うよ。
白井:以前、別の現場でゴミ箱の上に置いてあった建築模型を捨てちまった奴がいたんだ。ところが重要な物だったらしく大騒ぎになった。結局それは処分されちゃていて、会社が弁償したんだ。
それ以来、ゴミ箱の中に入っているもの以外は捨てないって決まりになってるけど、どう見てもゴミみたいのもあるよ。その時は、ゴミかどうか判断できないので回収できませんて貼り紙して置いとくしかない。ゴミはキチンとゴミ箱に入れて欲しいもんだ。
ーどんな人が働いていますか?
白井:9割以上が女。というと、あんた羨ましいと思うかもしんないけど、若い人はいないよ、みんな50代60代。70歳もいる。
女の花園というより、枯園だね。訳アリで一人暮らしの人や、商店のおかみさん、元会社経営者もいる。経歴は様々だけど、みんな自分の事はあまり話したがらないね。
―現場の空気は?
白井:それはもう、女の職場だから、いろいろあるよ。
シニア女子の働く職場、その知られざる実態は?次回お届けします。
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