認知症の疑いがあると判定された75歳以上の運転者に医師の診断を義務づける改正道路交通法が、来年3月に施行されます。診断結果によっては、免許が取り消されたり停止されたりすることもあります。
高齢者の事故が後を絶ちません。
事故には認知症が大きく関わっているのが実態です。
認知症は、75歳から急激に増加します。
現在、75歳以上の運転者は3年に1度の免許更新時に「認知機能検査」を受けることが求められています。
しかし、検査が事故防止につながりにくいのが実情です。
検査は記憶力と判断力を調べる筆記式のテストで、各能力が低い「1分類」、少し低い「2分類」、問題ない「3分類」に判別します。
現在の制度では、検査で「1分類」と判定されても、その後に逆走などの違反をしなければ医師の診断を受ける必要はありません。
昨年は5万3815人が検査で「1分類」と判定されましたが、医師の診断を受けたのはわずか1650人でした。
これでは、検査が抑止力にはなりません。
実際に、2014年に死亡事故を起こした75歳以上の運転者のうち、約4割が認知機能検査で1分類か2分類でした。
3月からの新制度では、「1分類」と判定されると医師の診断を受け、認知症を発症していると診断されれば、程度により免許は取り消しか停止になります。
更新時でなくとも、一時不停止や信号無視、逆走など18の違反をした場合、臨時の検査が義務づけられます。
結果、診断を義務づけられる対象者が毎年4万~5万人規模になると見込まれます。
免許証には自主返納制度があり、返納することによる特典も多数あります。
75歳という年齢を一つのボーダーラインとしてとらえ、本人だけではなく家族も一緒になって考える必要がありそうです。
高齢者の運転に悩んでいる家族は、運転免許センターなどに「運転適性相談窓口」で相談することもできます。
相談の結果、認知症が疑われれば、各地の公安委員会が道路交通法に基づき、医師の診断を受けるよう命じることができます。
認知症と診断されると、免許は取り消しか停止になります。
診断を受けない場合も同様です。
一方では、改正法によって、実際には安全に運転できる多くの人も、認知症というだけの理由で免許を失うことになります。
年金の削減などの影響で、レンタカーの回送や、デイケアの運転手など、高齢になっても運転で働く必要のある人は増えています。
そのような高齢者から職を奪うことにもなります。
しかも、本当に症状の重い人は、免許がなくなったことすら忘れ、危険な運転を続けてしまう可能性があります。
増加する高齢者の悲惨な事故を防止するのは急務ですが、それに要る不都合や不利益も十分検討する必要があります。
免許証自主返納に関してはこちらにまとめてあります。
免許証自主返納の方法と特典
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